リスボンに誘われて

『リスボンに誘われて』は、パスカル・メルシエの『リスボンへの夜行列車』を原作とする、2013年のドイツ、スイス、ポルトガルの合作映画。監督はビレ・アウグスト。原題は『Night Train to Lisbon』。
スイスのベルンで高校教師を勤めるライムントは、偶然手にした1冊の本をきっかけに、ポルトガルのリスボンへと向かう。ライムントは、本の著者であるアマデウとその周りで起こった40年前の出来事を追いながら、いつしか自らの人生の彩りを取り戻していく。
Estado Novo(1933年から1974年まで続いたポルトガルのファシズム政権)の末期で、カーネーション革命(1974年にポルトガルで起こった無血クーデター)前夜のリスボンと、現代の、ふたつの時間軸を交差させながら、アマデウの人生が少しずつ浮き彫りになっていく様はミステリの謎解きを見ているようで、スクリーンに引き込まれた。
僕は現代のおおらかで楽天的なポルトガルの姿しか知らないので(しかも観光客という立場だけで)、ポルトガルでファシズムの時代が長く続いたことを知識として知ってはいたけれど、ほんの40年前まで、この映画で描かれていたような反人間的で強権的な暗黒の世の中だったことを目にして衝撃だった。
日本のファシズムの記憶は70年近く経って薄れつつあり、だからこそファシスト勢力が台頭してるんだけど、ポルトガルでは未だファシズムの時代は記憶に新しいんだろうなぁ。
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- [2014/09/24 22:19]
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かぐや姫の物語

『かぐや姫の物語』は、日本の古典『竹取物語』を原作とする高畑勲14年振りの監督作品。
ストーリーは『竹取物語』にほぼ忠実ながら、ものごとの過程をディテールアップすることにより物語に肉付けを行っている。
高畑監督は何故、何のためにこの映画を作ったのか。僕は映画を観ながら、観終わったあとも、ずっと考えていた。
もちろん娯楽作品としては完璧に成立していて、かぐや姫の心象風景を見事に緻密に描いているし、毛筆の淡い水彩画のような絵が全編に渡って動きまくる様は観ていて圧巻だ。
でも、高畑監督の作家性は、この映画を通して僕たちに何を訴えているのか、それがイマイチよくつかめなかった。
日本の古典作品を後世に伝えたいと考えたとか? まさかそれだけ?
で、映画を観て10日経った現在、僕は、高畑監督の伝えようとしたことは、「与えられた生を精一杯生きろ」ということに尽きるんじゃないかと思うようになった。
これはジブリ作品、と言うか宮崎駿作品が繰り返し訴えてきたことと基本的に同じだ。
しかし同じテーマであっても、ほとんど性格破綻者寸前の(注:良い意味で)宮崎駿監督と、真面目で常識人の高畑監督というキャラクターの違いが現れているような気がして、興味深い。
あ、ニカさんの歌、映画の世界観に合っていてすごく良かったですね。高畑監督が初音ミクを使って作曲したという劇中歌も。
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- [2013/12/08 16:45]
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風立ちぬ

零式艦上戦闘機(いわゆるゼロ戦)の設計で知られる航空技術者、堀越二郎の半生を描いた、宮崎駿監督による長編アニメーション。
実在の人物である堀越二郎の10代から30代にかけてのエピソードを基にしながらも、堀辰雄の自伝的同名小説『風立ちぬ』のエピソードが盛り込まれており、映画の登場人物である堀越二郎は、実在の堀越二郎と小説家堀辰雄のふたりを融合した人物設定がなされている。
宮崎駿の監督作品としては『崖の上のポニョ』以来5年振りの作品であるが、題名に "の" の文字が入らないという点は珍しい。
(蛇足だけど、ポニョの感想文に「個人的には、次作は『紅の豚』のように宮崎駿の趣味を全面に押し出した映画が観たいなぁ。」と書いたけど、まさしくその通りになりましたね。)
宮崎駿監督は、「この映画は戦争を糾弾しようというものではない。ゼロ戦の優秀さで日本の若者を鼓舞しようというものでもない。本当は民間機を作りたかったなどとかばう心算もない。自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである。」と述べている。しかし監督の反戦のメッセージは観る者に強烈に伝わってくるはずだ。作中、そして作外においても。
関東大震災、復興、そして行く先には破滅しかない戦争へと突き進む時代に生きる登場人物達。そんな時代の物語を、あえて今作ったのは何故か。
宮崎駿監督は、間違いなく、2013年の現在が、のちに "戦前" と呼ばれるであろう時代なのだと認識している。
- [2013/08/04 19:09]
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シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~

『シェフ! ~三ツ星レストランの舞台裏へようこそ~』は2012年のフランス映画。原題は "Comme un chef"。監督はダニエル・コーエン。
有名な三ツ星高級レストラン "カルゴ・ラガルド" の星を長年維持し続けてきたが、近年は時代遅れとの評価が広まりつつあるシェフ、アレクサンドル・ラガルドをジャン・レノが、有名シェフのレシピを完璧に再現する天才的な舌を持つが、自身の性格が故仕事が長続きしない若手シェフ、ジャッキー・ボノをミカエル・ユーンが演じる。
当初、"スランプに陥ったシェフの代わりに、素人シェフたちが老舗レストランの星を守るために一致団結する" みたいなプロットを知ったときは、以前観た同じフランス映画の『オーケストラ!』(過去記事)を彷彿としたけど、特にスタッフが同じとかではないみたい。"オーケストラ!" と "シェフ!" っていう邦題の付け方も似てるんだけど。
前述のレストランの格付け星審査を乗り切ろうとするシェフたちの奮闘を横軸に、ジャッキーとその婚約者ベアトリスとの関係や、これまで家庭を顧みずにレストランの星を守ることだけに人生のすべてを傾けてきたラガルドの変化を縦軸に、全体的にコメディタッチに描いている。ジャン・レノは、最近はくだんのドラえもんのCMのイメージが強いからかも知れないけど、コメディが似合いますね。ラガルドとジャッキー扮する "ノグチ夫妻" なんて、良い意味で噴飯ものだったわ(映画観て下さい)。
分子料理(分子ガストロノミー)なんてものはこの映画で初めて知ったけど、分子料理のオーソリティーという設定のホアン・カステラなるスペイン人シェフが出てくるくだりは、あのエル・ブジへの皮肉だったのだね、面白い。
リュック・ベッソンのフレンチ・コメディな作品が好きなひとにはオススメ出来る1本ではないかと。
- [2013/02/16 00:30]
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テッド (吹替版)

僕は良識が眉をひそめるような映画は基本的に大好きなのだが、アメリカのコメディ映画ということで、どうしても大好きな『メリーに首ったけ』と重ね合わせて観てしまった。で、『メリーに首ったけ』から14年、アメリカ社会の病理はここまで進んだかと。
まぁそんなことはどうでも良くて、笑えるバカ映画でした。ただ、この映画見て最高に面白かったとか公言すると人間性を疑われるんじゃないかとつい心配してしまうあたり、日本の社会はまだまだ健全なのかなとも思ったり(笑)
同時代性を持つアメリカ人が観たらもっともっと楽しめるんだろうな。
あと、ノラ・ジョーンズの使われ方は、『俺たちフィギュアスケーター』(過去記事)のサーシャ・コーエンくらい贅沢(笑)
今回時間が合わなくて字幕ではなく吹替しか観ることが出来なかったんだけれど、有吉のテッド、良かったですよ。あえて吹替を見るという選択肢もアリだと思います。
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- [2013/02/02 11:08]
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