米米CLUB - GO FUNK 

Artist: 米米CLUB
Title: GO FUNK
Label: CBS/Sony Records
Catalog#: 32DH5117
Format: CD
Released: 1988/09/21
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このアルバムは僕が中2のときに、初めて自分の意志で、自分の自由になるお金(お小遣い)を使って買ったCDなんです。AMラジオのリクエスト番組(たしか『OBCブンブンリクエスト』だったと思う)で流れた「KOME KOME WAR」を聴いて何でかはわからないけれどこの曲のことが気になり、西武八尾店の上の方の階にあった小さなレコード屋でCDを買ったのでした。そのとき手に入れたのは通常盤で、それも10年前の引越の際に売ってしまったのですが、先日状態の良い初回盤を見つけたので、このアルバムを含め何枚か買い戻してしまいました、何となく。そして再来した突然の米米ブーム。10年前は米米なんて僕の生活にはもはやまったく不必要な音楽となっていたのですが、いやはや先のことなんて本当にわからないものです。まさかこの僕が再び米米を聴くようになるだなんてね。

『GO FUNK』は米米CLUBの4枚目のアルバム。タイトルの "GO FUNK" は "ご飯食う" のもじり。米米のそれ以前のアルバム・タイトルも、『シャリ・シャリズム』、『E・B・I・S』、『KOMEGUNY』(アメリカ録音だったから米国=こめぐに)と、お米にまつわるダジャレで統一されており、ちなみに次の5thアルバムは『5 1/2』(五・半)。
デビュー以降、録音作品ではプロデューサーとの軋轢が絶えず、アルバムはライヴとは別物でノベルティみたいなもの、等の発言もあった米米だったが、萩原健太をプロデューサーに迎えた本作は、実質セルフ・プロデュースと言っても良いバンド主体の制作環境だったらしく、結果的に、米米の持つバンドとしてのポテンシャルが一気に花開く結果となった。
もちろんまだ「君がいるだけで」とかクソみたいな売れ線ポップスを作るようになるだいぶ前の時代なので、ほとばしるファンク・チューン連発。猥褻物と皮肉と偽悪趣味と世の中をナメた態度が最高にかっこいい。
それからこのアルバムの音の良さ。これは今回ひさしぶりに聴き直して初めて気づいたのだが、スネアのバシッとしたアタックの強さと抜けの良さであったり、銃弾のように攻撃的なホーンセクションの固まりであったり。こういうのってやっぱりファンクなのだと思う。ハードミニマル黎明期のJeff Millsに通じるどファンク。

僕が熱心に米米を聴いていた頃は、メロディーのキャッチーなポップス曲(「Shake Hip!」「sure dance」「浪漫飛行」など)が米米の好きな部分なのだと自己認識していたのだけれど、実は無意識のうちに、身体の動く肉体的なファンク成分が強い楽曲も吸収していたみたい。
そして僕が後年テクノが好きになる際の、ダンスミュージックの部分の素地は、実はこの頃から育まれていたのかも知れないな(エレクトロニックな部分の素地はまた別のところから)。よくわからないまま「KOME KOME WAR」が気になってCDを買った中2の自分の感覚を、今になって褒めてやりたいね(笑)

GO FUNKGO FUNK
(1991/09/01)
米米CLUB

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GO FUNKGO FUNK
(1997/03/31)
米米CLUB

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Tracklist:
01. INTRODUCTION
02. 美熱少年
03. KOME KOME WAR
04. SEXY POWER
05. BEE BEE BEAT
06. あ! あぶない!
07. OH! 米 GOD!
08. TIME STOP
09. なんですか これは
10. FRANKIE, GET AWAY!
11. 僕らのスーパーヒーロー
12. いつのまにか
13. 宴 (MOONLIGHT MARCH)
14.I'M A SOUL MAN
15.MY SWEET SWEET SHOW TIME

KOiZUMiX PRODUCTION - bambinater 

Artist: KOiZUMiX PRODUCTION (小泉今日子)
Title: bambinater
Label: Victor Entertainment
Catalog#: VICL-5160
Format: CD
Released: 1992/12/16
[試聴]
[Amazon.co.jp] [iTunes Store]
小泉今日子がKOiZUMiX PRODUCTION名義でリリースした1992年のミニアルバム。
小泉今日子がクラブ寄りのアプローチに挑んでいた時期があったのは以前書いた通りで、本作も企画段階としてはおそらくクラブやダンス・ミュージックを取り入れた作品という設定だったのだろうけど、結果的にはかなり渋谷系の色が濃く出たアルバムになっている。それは間違いなく藤原ヒロシ、小西康陽、小山田圭悟、田島貴男といったクリエイターの人選の結果だ。ダンス・ミュージックという点では、爽快なハウス・ミュージックに仕上がっているテイトウワの手がけた「Drive」が唯一の救いとなっていると言えよう。
さて、僕が今回のエントリを書いたのは、このアルバムで1曲だけ非常に異質な、異形の雰囲気を放っている曲があるのを紹介したかったからだ。4曲目の「天使のささやき (When Will I See You Again)」。
これはもちろんThe Three Degreesの同名曲のカバーなんだけど、ダブマスターXと朝本浩文が手がけたアレンジがエグすぎる。BPM140の4つ打ちキックの導入部から、がなり立てる早口のラガMC、レイヴシンセと高速ブレイクビーツ、そして小泉今日子のヴォーカルの裏で延々と鳴り続けるTB-303。つまりレイヴィーなアシッド・ラガジャングルという、まさに1992年のダンス・ミュージックの音なんだけど、こんなのをバックにまだまだ当時トップ・メジャー・アーティストだった小泉今日子に歌わせた意味がさっぱりわからない。バブル期ということもあるんだろうけど、すげえやりたい放題だったんだなぁ。
ちなみに、当時はさらにコアな層を狙ってリミックスEPなどがアナログで何種類も出ていて、一時期はすっかり入手困難でプレミアのついていた盤もあったのだけれど、今ではiTSなどでデジタル音源が普通に買えてしまいます。わはは。

BANBINATERBANBINATER
(1992/12/16)
KOiZUMiX PRODUCTION

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KOIZUMIX PRODUCTION VOL.1 N.Y.REMIX OF BAMBINATER (アナログ)KOIZUMIX PRODUCTION VOL.1 N.Y.REMIX OF BAMBINATER (アナログ)
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小泉今日子

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Tracklist:
01. Bambina
02. 東京ディスコナイト
03. 華麗なる休暇 (Les Vacances De Mademoiselle Kyon²)
04. 天使のささやき (When Will I See You Again)
05. Drive
06. Sexy Heaven
07. ラブバラ (Love-Ballad)

小泉今日子 - Koizumi In The House 

Artist: 小泉今日子
Title: Koizumi In The House
Label: Victor Entertainment
Catalog#: VDR-1603
Format: CD
Released: 1989/05/21
[試聴]
[Amazon.co.jp] [iTunes Store]
小泉今日子と近田春夫の共同プロデュースによる、おそらく日本のメジャー・リリースでは初となるハウス・ミュージックのアルバム。1989年発表。
この頃のキョンキョンは、アイドル~メタ・アイドルからの脱皮をはかるためにクラブ・ヒットを狙っていた時期なのだそうで、ヒップホップ(ブレイクビーツ)、ねっとりしたディスコ・ファンク、ダブ、そして、今聴くと古臭い感じもするボテボテとした野暮ったいグルーヴがいかにもな80'sハウス・ミュージックをやっています。ヒップホップとハウスが共存しているのもこの時代ならでは。
注目すべきはアシッドハウスも積極的に取り込んでいることで、これは日本初のアシッドハウスのレコードだとされているヤン富田によるMiss A『Lowdown』(過去記事)と同じリリース年。このあたりの、ヤン富田、近田春夫、ダブマスターX、小西康陽といった先達の相関図って、ネットのどこかにないですかね?
それにしてもこのアルバムのキョンキョンはエロティック、そしてドラッギーだ。歌のほうも、「なんてったってアイドル」のアンサーソング「Kyon Kyonはフツー」、猫を電子レンジで乾かしたという(当時の)時事ネタを扱った「マイクロWAVE」、原題は「麻薬」だったというまんまそのまんまを歌った「音楽」など、問題作も多し。

KOIZUMI IN THE HOUSEKOIZUMI IN THE HOUSE
(1989/05/21)
小泉今日子

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KOIZUMI IN THE HOUSE +2(紙ジャケット仕様)KOIZUMI IN THE HOUSE +2(紙ジャケット仕様)
(2007/08/22)
小泉今日子

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Tracklist:
01. Fade Out
02. 好奇心 7000
03. STAND UP
04. マイクロWAVE
05. CDJ
06. Kyon Kyonはフツー
07. 集中できない
08. 音楽
09. 男の子はみんな
10. 水のルージュ (Break 'ACID' Beats MIX)

きゃりーぱみゅぱみゅ - なんだこれくしょん 

kpp.jpgArtist: きゃりーぱみゅぱみゅ
Title: なんだこれくしょん
Label: Warner Music Japan
Catalog#: WPCL-11518
Format: AAC
Released: 2013/06/26
[試聴]
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前作『ぱみゅぱみゅレボリューション』については、制作を急ぎすぎたのか何なのかよくわかんないけど、「PONPONPON」「つけまつける」「CANDY CANDY」といった魅力的な既発曲と、アルバム用に書き下ろされたその他の楽曲のクオリティの落差が激しくて、簡単に言うとやっつけ仕事感が鼻にも耳にもつきまくる残念な印象のアルバムという評価だったので、今作『なんだこれくしょん』も、実際に聴くまではほんと心配してたんですよ。
きゃりーぱみゅぱみゅの2ndアルバム『なんだこれくしょん』は、「ファッションモンスター」「キミに100パーセント」「ふりそでーしょん」「にんじゃりばんばん」「インベーダーインベーダー」と、1stアルバム以上にアルバム全体に占める既発曲の密度が高く、しかしそれらの楽曲の魅力を損ないも負けもしないアルバム曲の質の高さや豊富な実験性、そして意図したメッセージを込められたであろう曲順の非の打ち所のなさを見ても、"傑作" という単語が口元からこぼれ落ちそうになる。
先ずは今回のアルバム用に作られた楽曲群の個性の強さ。「Super Scooter Happy」はCapsuleのカヴァーなので別としても(スンマセン、原曲聴いたことありません)、90年代のUKハードハウスにファンコットやゴルジェを織り交ぜた「み」、かつて酔った勢いで小室哲哉に求婚したことのある中田ヤスタカなりのTM Networkへのオマージュ「さいごのアイスクリーム」、このアルバムいちばんの問題作「のりことのりお」…。
曲順においては、オープニング「なんだこれくしょん」のイントロの和太鼓から「にんじゃりばんばん」へつなぐことにより、和の雰囲気をスムーズにアルバム全体に行き渡らせることに成功しているし、ダブステップに挑戦した「インベーダーインベーダー」から前述の「み」、さらにハードダンスな「ファッションモンスター」へと続く中盤のレイヴ時間(余談だけど僕は「ファッションモンスター」を聴くと篠原ともえ+石野卓球の「チャイム」を思い出すんだ)、そして終盤の「ふりそでーしょん」で見せる祝祭的な雰囲気、それはアルバムのラストを飾る「おとななこども」までメッセージが引き継がれている。そう、このアルバムはハタチを迎え、大人の階段を登り始めたきゃりー自身を祝っているのだ。ハッピーバースデーおめでとう自分。
それにしても「おとななこども」だ。Perfumeが歌ってもおかしくなかったこのトランシーでエピックな名曲を、中田ヤスタカがきゃりーに用意したという意味は大きい。
僕はほんの少し前まで、きゃりーぱみゅぱみゅの楽曲の魅力は100パーセント中田ヤスタカによるもので、どこの誰が歌っても成立するものだと思っていた。しかし先日『SMAP×SMAP』でSMAPが「にんじゃりばんばん」を歌っているの聴いたが、まっっったく面白くも何ともなかったんだよねぇぇぇ。ミニマルに繰り返される記号のような歌詞も、実はきゃりーのイメージとは真逆のマイナーコードを多用している楽曲も、意味性を排除しているようで実は歌っている内容はラブソングであったりするのも、すべてきゃりーぱみゅぱみゅのパーソナリティとパフォーマンスが前提で初めて成立するように作られているという事実。
きゃりーぱみゅぱみゅと中田ヤスタカ、そして彼女のチームが生み出すマジカルな時間は、まだまだ続きそうだ。

なんだこれくしょん(通常盤)なんだこれくしょん(通常盤)
(2013/06/26)
きゃりーぱみゅぱみゅ

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なんだこれくしょん(通常盤)(予約先着特典「なんだこレターカードセット<2012-2013>」付き)なんだこれくしょん(通常盤)(予約先着特典「なんだこレターカードセット<2012-2013>」付き)
(2013/06/26)
きゃりーぱみゅぱみゅ

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なんだこれくしょん(初回限定盤)なんだこれくしょん(初回限定盤)
(2013/06/26)
きゃりーぱみゅぱみゅ

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なんだこれくしょん(初回限定盤)(予約先着特典「なんだこレターカードセット<2012-2013>」付き)なんだこれくしょん(初回限定盤)(予約先着特典「なんだこレターカードセット<2012-2013>」付き)
(2013/06/26)
きゃりーぱみゅぱみゅ

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Tracklist:
01.なんだこれくしょん
02.にんじゃりばんばん
03.キミに100パーセント
04.Super Scooter Happy
05.インベーダーインベーダー
06.み
07.ファッションモンスター
08.さいごのアイスクリーム
09.のりことのりお
10.ふりそでーしょん
11.くらくら
12.おとななこども

KANAMORI - 夜半解体/Dismantled Desire 

Artist: KANAMORI
Title: 夜半解体/Dismantled Desire
Label: 四季協会/Shiki Kyokai
Catalog#: Shiki Kyokai October Autumn 2012
Format: 2LP + CD
Released: 2013/03/11
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DJ Shufflemasterこと金森達也の12年振りとなる2ndアルバムが、唐突に発表された。

ここ数年は自らの事業に忙しく音楽にかかわる時間がないと言われていた金森氏だが、昨年あたりから新作が出るかもしれないと風の噂が聞こえてきたり、Dommuneでちらと姿を見かけたり、実は神宮前のGalaxyに関わっているのではと噂が持ち上がったり。そして昨年の大晦日にKanamoriとしてのイベント出演と、その名前に添えられた "四季協会" の名前。レーベル名をブランキから持ってくるあたりのセンスなんかは昔と変わっていない(例えば新宿マッドとか東京ローズとかさ)。
アルバム『夜半解体』には、15分前後の(テクノとしては)長尺の曲が4曲収録。12インチのヴァイナル2枚と同内容のCDと写真集というリリース形態で、マスタリングは電気グルーヴ『人間と動物』と同じくベルリンのDubplate & MasteringのHelmut Erlerが手がけている。3月11日という発表された日付も、氏にとっては重要な要素なのだと思われる。

かつてのShufflemaster時代のようなDJユースのストレートなクラブトラックは影を潜め、インダストリアルでアブストラクトな、ストーリー性やメッセージ性を重視した音楽が繰り広げられる。一聴して似たような音楽が簡単に思いつかないため戸惑いも多く言語化に時間がかかるが、ジャケットの帯には "テクノ" の文字が記されており、氏が今でも自らの音楽をテクノだと定義していることには少々カタルシスがある。
音楽的には、実はテクノやダブステップといったクラブミュージックの方法論を駆使したプログレであることが聴いて取れるが、ここにコズミックで楽天的なトリップは皆無で、むしろ禍々しさと気怠さが同居した、徹底的に現実的なバッドトリップが繰り広げられる。数多のサンプリングを加工したウワものによって異世界を創り上げる能力も衰えていないように思うが、果たして金森氏は、テクノシーンの表舞台から身を隠していた間も創作活動は続けていたのだろうか。そうだとしたら、どんな音楽を鳴らしていたのだろう。
今後も四季協会からは何がしかの展開が予定されているようなので、目が離せない。先ずは金森達也の復帰を喜ぼうではないか。

Tracklist:
A. 赤線地帯・セックス原子炉 ゾーン1 / Red Light District - Sex Reactor Zone1.
B. 黄昏東京 / Vento Soffia Da Est,Una Sera Di Tokio.
C. ラ・セゾン 薔薇の香り / La Saison D'amour,Femme Odeur De Roses.
D. 人間蒸発 / It seemed that they vanished among Maniac Love.