Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022 



配信ライブのチケットを購入して視聴するという方式のライブ/コンサートは、コロナ禍以降に消極的選択肢ではあったもののとうに一般化していたもので、しかし僕自身は今回が初めての経験でした。
本日2022年12月11日に世界30の国と地域で配信された坂本龍一のピアノ・ソロ・コンサート "Ryuichi Sakamoto: Playing the Piano 2022" は、東京・渋谷のNHK放送センター509スタジオにて事前に1曲1曲撮影され、丁寧に編集された60分余の映像作品。
今なお闘病中である自身に、1本のコンサートをやり切る体力がもはや残っていないという理由により、ここでも消極的選択肢ではあったものの、同時に最大効果を得られる方式であるとも言えるものではなかったかと思います。
まるでショパンを思わせる静謐な演奏の表層とはまったく趣を反する自身の表情は、観ている側の魂が揺さぶられる渾身の演奏と言えるもので、自身の代表曲を惜しげもなく披露する今回の選曲も含めて、演奏後に自身が語ったように、まさしく「ここへ来て新機軸」といえるものでした。
そしてこれは完全に僕の言語的ボキャブラリーの貧困さ故にこのような表現しかできないことをご容赦いただきたいし、ご本人には本当に申し訳ないと思うのだけれども、死に往く者から振り絞られる音楽からは揺るぎない生命の躍動を感じるという圧倒的な感動を憶えた、というのが僕の感想のすべてです。
本当に素晴らしいコンサート体験でした。

なお、映像配信後には、来年1月17日に発売されるニューアルバム『12』の全曲視聴が行われました。
ピアノ作品だけではなくシンセサイザーを使ったアンビエントも含め、今回のコンサートと同じく静謐な作品となっています。



Setlist
01. Improvisation on Little Buddha Theme
02. Lack of Love
03. Solitude
04. Aubade 2020
05. Ichimei - Small Happiness
06. Aqua
07. Tong Poo
08. The Wuthering Heights
09. 20220302 - sarabande
10. The Sheltering Sky
11. The Last Emperor
12. Merry Christmas Mr. Lawrence
13. Opus - Ending
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星野源 DOME TOUR 2019 POP VIRUS @京セラドーム大阪 2019/02/03 


※この記事は2019年2月4日に各種SNSに投稿した内容を再構成したものです。

星野源@京セラドーム、一切の出し惜しみがなく、構成の隙のなさ、音楽性の豊穣さ、それはそれは圧倒的なエンターテインメント・ショウでした。

ドーム公演であるにもかかわらずライブハウスのような体感的な距離の近さと一体感。ライヴハウス京セラドームにようこそ、というフレーズは同世代であれば誰しもが思うところだったろう。

僕は10代の頃から今までマイナーな音楽趣味を引きずってきたわけだけど、ここまで先鋭的な大衆音楽をぶちかまされてしまうと自分のこれまでの人生を否定されたような気持ちにすらなるわけで。

それにしても3時間に渡って一切不満なや余計なことを考える余地がなく、最初から最後まで多幸感を得られるコンサートというものに、今後どれだけ恵まれる機会があることだろう。

Setlist:
歌を歌うときは
Pop Virus
地獄でなぜ悪い
Get a Feel
桜の森

Pair Dancer
Present
サピエンス
ドラえもん
ばらばら
KIDS
プリン
くせのうた
化物

SUN
アイデア
Week End
Family Song
君は薔薇より美しい
時よ
Hello Song

岡村靖幸 2018 SPRINGツアー マキャベリン @ Zepp Namba 2018/04/30 


岡村靖幸 | YASUYUKI OKAMURA >>

岡村靖幸のライブに行くのは3年ぶりだったのですが、その間も彼は半年に1回の全国ツアーを相変わらずコンスタントに続けており、そんな中今回久しぶりにライブに行きたいなと思ったのは、何より昨年DAOKOとコラボした「ステップアップLOVE」がとにかく素晴らしく、昨秋のツアーではどうやら岡村靖幸のひとり「ステップアップLOVE」を演っていたという噂も聞きつけ、どうしてもライブで聴きたくなったからです。
その「ステップアップLOVE」は2曲目で、DAOKOのパートはそのままDAOKOの声がテープで流れている状態ではありましたが、1曲目の「ステップUP↑」から「ステップアップLOVE」に繋ぐって、絶対曲名でセトリ組んでるよね?笑
かつて氣志團の綾小路翔を深夜に呼びつけ、「翔さんはセットリストって、どんな風に決めてますか?」「もうすぐツアーなんですけど、まだ悩んでいて…」と相談したという逸話を遺す岡村靖幸らしく、きっとベイベたちが楽しがる姿を期待しながらこの箇所のセトリを決めたであろうことは想像に難くありません。
それ以外にもセトリの斬新さに関しては、一青窈に提供した「Lesson」(過去記事)を披露したり、ライブでのラスト曲のド定番だった「Out of Blue」を中盤に持ってきたり(しかもギターを弾かなかったり)、弾き語りコーナーがキーボードではなくギターだったり、「友人のふり」もキーボード弾き語りではなくスタンドマイクでフル尺でじっくりと歌ったりと、ここ3年ほどの変化を見ていないので確かなことは言えないまでもそこかしこに見ることが出来て、それと同時に喉のコンディションの安定感は本当に確かなもののようで、安心してそのパフォーマンスに身を委ねることが出来たのが何より良かった。
例をひとつ挙げると、「どんなことをして欲しいの僕に」みたいな半分以上ファルセットボイスを使用する曲なんてかつてはもう歌うことが出来なかっただろうと思われていたのに、きちんと当時の録音作品を超えるくらいの力強い歌声を聞かせてくれていて。
僕が初めて岡村靖幸を観て唐突にファンになってしまった6年前からずっと言いたくて、でも表に出すのを躊躇し続けてきた "完全復活" という言葉は、全盛期とされていた1990年頃の岡村靖幸をしれっと超えてしまい、今なお全盛期をアップデートし続けているという現在の状況に、もはや発するタイミングを完全に失ってしまった。そしてこんな痺れることってないよな、と思うのだ。

岡村靖幸 2018 スプリングツアー マキャベリン @ Zepp Namba 2018/04/30 セットリスト
01. ステップUP↑
02. ステップアップLOVE (DAOKO × 岡村靖幸)
03. Dog Days
04. どぉなっちゃってんだよ
05. Lesson (一青窈)
06. 青年14歳
07. ぶーしゃかLOOP
08. 愛の才能 (川本真琴)
09. バンドメドレー
10. できるだけ純情でいたい
11. ヘアー
12. 忘らんないよ
13. 彼氏になって優しくなって
14. Out of Blue
15. あの娘僕がロングシュート決めたらどんな顔するだろう
16. だいすき
(アンコール)
17. Superstition (Stevie Wonder)
18. どんなことをして欲しいの僕に
19. Punch↑
20. 祈りの季節
21. SUPER GIRL
(ダブルアンコール)
22. 木綿のハンカチーフ (太田裕美) 〜 大阪ベイベ
23. 真夏の果実 (サザンオールスターズ)
24. 友人のふり
25. 愛はおしゃれじゃない
26. ビバナミダ

小沢健二 春の空気に虹をかけ @ 大阪城ホール 2018/04/29 


Kenji Ozawa 小沢健二 Official Site ひふみよ >>

一昨年のツアー "魔法的"(過去記事)以降、3枚のシングル発売にフジロックや数々のテレビ出演と、近年になくその(商業的な)活動の密度を上げてきた小沢健二による、2018年の春に行われた東京・大阪の全4公演 "春の空気に虹をかけ"。
今回のライブのテーマが "36人編成ファンク交響楽" であることは当初から明かされていたことではあるのですが、僕は正直言ってその意味を掴みかねていました。
蓋を開ければそこには特に何のレトリックもなく、文字通り36人編成楽団によるファンク交響曲を中心に奏でられるまごうことなき小沢健二の世界だったのですが、僕を含め聴衆の誰しもが予想していなかったであろう、あるひとつの要素が加わることにより、今回のライブの意味性そのものが大きく変容したことはやはり大きな驚きと言えるでしょう。
それは、36人の楽団メンバーのひとりでもあり、開演から終演まで、常に小沢健二の傍らに寄り添いながら、ギターやパーカッションの演奏だけでなく、ヴォーカルやコーラスから照明やパフォーマンスまでをこなす、満島ひかりの存在。
最新シングル『アルペジオ』において競演を果たしていることから、彼女が登場すること自体は特段大きなサプライズではなかったのだけれど、それにしても全編に渡って小沢健二と満島ひかりのツインヴォーカルと言っても過言ではない様相を目の当たりにしてしまうと、今回のツアータイトルなどは、"小沢健二と満島ひかり 春の空気に虹をかけ" とするのが正確であり本来の姿ではなかったのかと思ってしまいます。
ところで、36人編成のうちざっと見て実に25人ほどが服部隆之率いるストリングスだったのですが、その重層的でゴージャスな音の響きは贅沢であり、特にライブ中盤の「フクロウの声が聞こえる」以降で奏でられた躍動的な音の塊、「戦場のボーイズ・ライフ / 愛し愛されて生きるのさ / 東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー / 強い気持ち・強い愛」という煌めきと強さのある曲たちが次々と顕れては移り変わっていく交響詩には高揚感があり、「流動体について」は「ある光」のアンサーソングだとする僕の主張を証明するかのような「ある光」から「流動体について」への繋ぎなども含め、箱庭に囲まれたマジカルな世界は健在でした。
魔法的のときと同様に「生活に帰ろう。」という小沢健二からの最後の言葉によりマジカルな世界は雲散霧消するのですが、前回と違って突き放された感がなかったのは、小沢健二と満島ひかりの主役ふたりが終始楽しそうにしていた印象が大きかったからかもしれません。
この例えが正しいのかどうか僕にはよくわからないのですが、まるで披露宴のような幸せでちょっと浮わついた気持ちが残るようなライブだったなぁ、何故か。

小沢健二 春の空気に虹をかけ @ 大阪城ホール 2018/04/29 セットリスト
01. アルペジオ (きっと魔法のトンネル先)
02. シナモン (都市と家庭)
03. ラブリー
04. 僕らが旅に出る理由
05. いちょう並木のセレナーデ
06. 神秘的
07. いちごが染まる
08. あらし
09. フクロウの声が聞こえる
10. 戦場のボーイズ・ライフ / 愛し愛されて生きるのさ / 東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー / 強い気持ち・強い愛
11. ある光
12. 流動体について
(アンコール)
13. 流星ビバップ
14. 春にして君を想う
15. ドアをノックするのは誰だ?
16. アルペジオ (きっと魔法のトンネル先)

MAHARAJA ALL MIXXX @ マハラジャ大阪 2017/09/15 

バブル期に隆盛を誇ったディスコ "マハラジャ" が2014年に大阪・梅田の東通り商店街に再オープンしたときは、僕やそれより上の世代の間ではちょっとした話題になったものでしたが、復活前のマハラジャの全盛期、僕はまだ 中学生とか高校生とかだったので、実際に遊びに行くという経験は一度も積むことがありませんでした。

この度、ニューアルバム『light showers』をリリースした藤井隆がマハラジャ大阪でライブを行うことを知ったわれわれ調査班は、深夜のマハラジャ大阪への潜入に成功しました。
個人的には人生初のマハラジャであり、およそ1月振りの藤井隆のライブとなります。

maharaja.jpg

さて、23時をすこしまわった頃、「ナンダカンダ」のリミックス・バージョンのイントロとともに、DJブース前の舞台兼お立ち台のスペースに藤井隆が登場。
今夜もキレッキレのダンスに飛び散る汗が眩しく、やはりこのひとのたたずまいはスターだと思う。

シティポップなニューアルバム『light showers』から2曲、先日リリースされたリミックス・アルバム『RE:WIND』からもう1曲(ちなみにDJケオリによるリミックス・バージョン。DJケオリのシャウトをリワインドするくだりは今回もやってくれた)、そしてラストはtofubeatsによる「ディスコの神様」!!
マハラジャというロケーションから考えられたセットリストだったのかな。30分程度のいわゆるインストア・イベント並みのライブではあったが、藤井隆は今夜も全力疾走でした。

蛇足ですが、MCで、25年ほど前の関西ローカルの深夜テレビ番組『テレビのツボ』のムック本を、持ってきたお客さんの手から取り上げ、チャンネル君時代の思い出を語るというレアな場面が見られたのも良かった。

藤井隆 @ マハラジャ大阪 2017/09/15 Setlist
01. ナンダカンダ (Hyper Juice REMIX)
02. AIR LOVER
03. DARK NIGHT
04. OH MY JULIET! (DJ KAORI REMIX)
05. ディスコの神様

マハラジャの様子についても少し書き記しておきます。

先ずは遊びに行く前から頭を悩ませていたドレスコードについて。昔のマハラジャがどうだったのか経験していないのでわかりませんが、現在はドレスコードはあってなきが如しという感じでした。Tシャツなどのカジュアルなお客さんも多かったし。まぁ男性客でよく目についたのはアフターセブンと思わしきサラリーマンのおじさんたちでしたが…

かかっている音楽は、今回遊びに行ったMAHARAJA ALL MIXXXというパーティーに関して言えば、メジャーEDMを中心とした最新ヒット曲という感じで、とはいえ選曲はDJによってわりと幅広く、Major LazerやDJ Snake、EXILE系やK-POPから星野源の「恋」までが一晩でかかるという振り切ったわかりやすさは単純に楽しい。

客層はやはり平均年齢高めで、40代50代のパリピたちが各々好き勝手に楽しんでおり、僕はこの中に入るとまだまだ若輩者だけど、年齢的にはぼちぼちこういうところで遊んだほうがいいのかもなという気持ちになりました。僕も40代サラリーマンであり、仕事帰りにそのままの格好で遊びに行けるという意味では、普通の(ドレスダウンの)クラブよりもかえって敷居は低く感じるし…