Luke Vibert - Lover's Acid (Planet μ/2005) 

アシッドつながりで、My Favourite Artist、ルーク・ヴァイバートの本名名義のニュー・アルバムが出たので紹介します。
ルーク・ヴァイバート名義としては、WARPから出た『Yoseph』以来約1年半振りのアルバムになるのかな?
今回はマイク・パラディナス(μ-Ziq/ミュージック)のレーベルプラネット・ミューから、12インチで出てた曲なんかも再録。

実は、ルークのこの辺の作風が、AFX(リチャード・ジェームス)の "Analord" シリーズのモデルなんだと思います。
って言うか「Analord」ってまんまルークの曲なんですけど…(本アルバムにも収録)。

ブレイクビーツ+エレクトロ+アシッド…って簡単に書くほど単純なモンじゃないですが、グニャグニャとした軟度の高さと振幅の広さが特徴の細やかなアシッド・サウンドと、独特の牧歌的なラウンジ風味はルークの専売特許。
この雰囲気はこのひとにしか出せません。
いやー、相変わらずスバラシイ。

ワタシ、彼の作る作品には全幅の信頼を寄せています。

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Miss A - Lowdown (Victor/1989) 

Tracklist:
A. Lowdown (Extended Short Wave Version)
B1. I'm Gonna Make You Love Me
B2. Acid, Make You Love Me

まあ長々とヤン富田ばかり取り上げてきましたが、そもそもこの12インチのことを書きたかっただけなんですよね。長くなってスマンでした。

さて、ニホンで初めてアシッド・ハウスのレコードを作ったのが何を隠そうヤン富田その人であり、これがその12インチであります。
このMiss Aというのは、ジャズ・ヴォーカリストの阿川泰子のこと。
ヤン富田のディープなアシッド・ハウスをバックに、阿川泰子がオールディーズ・ナンバーを歌い上げております。

元々『Dancing Lover's Nite』というアルバムのプロモ盤らしいのですが、レアすぎてヤン富田ファンの間ではかなりの高値で取引されているとか。
ワタシは運良く、4~5年前に、心斎橋のとある中古盤屋で数百円でゲットしましたが(ちなみに店の棚の中からこのレコードを見つけてくれたのは相方です。本人は忘れてるだろうけどいまでも密かに感謝していますよ)。

それにしてもヤン富田の作るアシッド・ハウスは、とても音楽的に聴こえるのは気のせいでしょうか。
まるでTB-303が歌っているかのようだ…。

Cornelius - Point Of View Point (Matador/2002) 

Tracklist:
01. Point Of View Point (Edit)
02. Point Of View Point (Yann Tomita Mix)

矛盾していると思われるかもしれませんが、ワタシ、APEは嫌いですがコーネリアスはわりかし好きなんですね。
と言っても積極的にCD買ったりするほどじゃないんで、このシングルもヤン富田が関わってなければ買ってなかったでしょう、きっと。

オリジナルのアコースティック・ギターの音をミニマルに繰り返しながら、フィールド・レコーディングされたかのような自然音に、電子音、チェロのような音、フルートのような音が現れては消えて行く9分以上ある大作です。
しかし長さを全く感じさせないんだなあ。

ボアダムズのリミックスもこのコーネリアスのリミックスも、オリジナル・ヴァージョンを軽う~く上回ってしまって、ヤン富田の格の違いを改めて見た思いです。

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Nigo feat. Flavor Flav - From New York To Tokyo (Ape Sounds/2001) 

Tracklist:
A. From New York To Tokyo Remixed by Yann Tomita
B. From New York To Tokyo Remixed by Yann Tomita (Instrumental)

ヤン富田、今度はA BATHING APEのNIGOをリミックス。

ボクはAPEもNIGOも、ついでにジェームズ・ラヴェルも嫌いなんで、この12インチを見つけたときは、ホント、かなり悩みましたよ。
NIGOなんかにカネ払いたくない、でもヤン富田やしな~…。

って、まあ、結局買ってしまった訳ですが、この時は、

"恋愛映画は大嫌いで絶対観ないが、船の出てくる映画は必ず観るという船舶マニアのタモリが、『タイタニック』を観るべきかどうか真剣に悩んだ"

のと同じくらい悩んだ。

まあ、そんなボクの心理的動向も影響してか、このリミックスは、ラップ入りもインストもイマイチ。
ヤン富田も、オリジナルのトラックを高木完とK.U.D.O.が担当している関係でリミックスの仕事を引き受けたのだろう、きっと。

Boredoms - Super Roots 8 (A.K.A. Bounce/1999) 

Tracklist:
A1. Jungle Taitei
A2. Jungle Taitei (DJ Let's TRY &D.I.Y. - Drum Machine Mix) remixed by EYE
B. Jungle Taitei (Laughter Robot's Hemp Mix) remixed by Yann Tomita

手塚治虫『ジャングル大帝』のテーマ曲をボアダムズがカヴァーしたものを、何故かヤン富田がリミックス!
土着的でカオティックなオリジナルを、キラキラした浮遊感あふれる見事なスペーシー・ダブ~エレクトロに料理しています。

ちなみに、ボクの持ってる12インチは、山塚アイがデザインしたピクチャー・レコード(写真)で、タワレコのレーベルからリリースされたものです。サイケ!

Pardon Kimura - Locals (Blues Interactions/1999) 

ヤン富田の "津波 Sound Constructions" からデヴューした、パードン木村の1st。
出た時は「パードン木村って誰?」などとと思ったものでしたが。

ヤン富田のひねくれた(?)ポップ感はそのままに、クラブミュージックにさらに接近し、ラウンジ風味を加えたかのような作風。
ヤン富田と違うところは、モードを意識している(と思われる)ところと、現代音楽のニオイが希薄なところですかね。
それにしても、このひとの出す電子音は気持ちいい。

1st以降もリリースが活発なパードン木村氏ですが、ヤン富田氏は最近何をやっとるのでしょうか。
ご存知の方、おられましたらご一報を。

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Yann Tomita - From Banzai Pipeline To Brain Wave (マガジンハウス/2001) 

Tracklist:
A. Surf Reports, Test Records, Part 1
B. Surf Reports, Test Records, Part 2

ヤン富田のバイオ・フィードバック・サウンドその2。
マガジンハウス刊『Relax』誌の、ヤン富田特集号(2001年2月号)の付録アセテート(ソノシート)。
これって激レアでしょ?、と思ってたら、近頃出版された『電子音楽 In The [Lost] World』(田中雄二著/アスペクト)の初回版特典としてCD化されたらしい。ちぇっ(笑)。

内容は、ハワイで適当に(?)つかまえた女の子の頭に電極をつけて遊んだって感じ(笑)。

Dr.Yann & Grandmaster Flash - Vinyl Beat Of Two Turntables With Cybernetics And Bio-Feedback (For Life/1998) 

Tracklist:
A. Vinyl Beat Of Two Turntables With Cybernetics And Bio-Feedback
B1. Introduction Of Bionic Music
B2. Vinyl Beat Of Two Turntables With Cybernetics And Bio-Feedback (Japanese Version)

ヤン富田のバイオ・フィードバック・サウンドその1は、アルバム『Music For Living Sound』にも収録された、ヒップホップの超大御所グランドマスター・フラッシュとのコラボ。
グランドマスター・フラッシュの頭と体に電極をつけて、脳波と筋肉の収縮運動から出る電気信号を音楽信号に変換した電子音と、グランドマスター・フラッシュ自身のDJプレイのセッションなんですが、コレ、カッコ良すぎます。
ドープな重~いどっしりとしたビートと、フリーキーに踊りまくる電子音のからみに、バイオ・フィードバック・サウンドについてのナレーションが英語でミックスされとります(B面はこのナレーションがニホンゴ)。

それにしても、よくこんな企画実現したなあ。
世界中でリスペクトされているドクターだからこそ。

Yin & Yang Tomita - Music For Living Sound (For Life/1998) 

4枚組なので、よろしくお願いします。

CDのオビに書かれたコピーが毎回微妙な笑いのツボを突いてくるヤン富田ですが、そのコピーの通り、音楽CD3枚+CD-ROM1枚の4枚組 "エクスペリメンタル" 作品集。

人間の体に電極をつけてその微弱な電気信号でシンセサイザーを鳴らしてみたり、太陽光線の刻々と変化する照度を電気信号に変換してシンセサイザーを鳴らしてみたり、エアコンの音をマイアミベースだと言い張ってみたり、ロボットを笑わせてみたり、自然風が演奏する "エオリアン・ハープ" という楽器を使用してみたり、レコードを120°づつ3分割にカーターナイフでカットしたものを3つつなぎ合わせて新しいレコードを作ってみたりと、この作品では "自分の意思ではコントロールできないもの" による音楽演奏がひとつのテーマとされています。

実験的な手法をエンターテインしようとするヤン富田氏の姿勢が余すことなく表れた怪作!
唯一の難点は、解説なしに音楽だけ聴くと、ただのイッちゃってるヤツの作ったわけのわからないノイズにしか聴こえない場合があることです(笑)。

勿論、スティール・パン、ジャズ・バンド、サーフ・ミュージック、キャロライン・ノバクといった、"自分の意思でコントロールできるもの" による音楽演奏も登場しますよ。
これらのバランスが、ヤン富田の音楽家としての作家性なのではないでしょうか。

もしあなたが "音楽好き" を自認するなら、1度は聴いてみることをオススメします。拡がりますよ。

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Doopees - Dooits! (For Life/1996) 

4曲入りなので、よろしくお願いします。

Tracklist:
01. Doopee Time
02. Dooits!
03. Love In Gas Music #2
04. Introducing The Doopees Album "Doopee Time"

『Doopee Time』収録曲がTVタイアップが取れたのでリリースされたと思われるシングル(一応 "ミニアルバム" というくくりらしいですが)。
カットアップ・ポップな「Doopee Time」も勿論いいんだけど、アルバムの予告編的なコラージュ・ミックスの4曲目が素晴らしいです。

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Doopees - Doopee Time (For Life/1995) 

新発売、これがキュート・ミュージックです。

ヤン富田の5thアルバム(一応そういうことにしておこう)、ドゥーピーズ名義の1stアルバム『Doopee Time』。
表面上のキュートさとポップさに隠された毒の部分を嗅ぎ取れるかどうかでこのアルバムの評価はかなり変わってくると思うんだけど、先ずはこの表向きのキュートさとポップさに身を委ねてみようではないか。

音的には、カットアップ・ポップ、ジャズ、アシッド・ロック、エレクトロニクス、etc…に登場人物のキャロライン・ノバクやスージー・キムのおしゃべりや歌が乗っかるというもの。勿論スティールパンもあります。
全体を通してトリップ感が満ちてるところなんか、砂原良徳の『Take Off And Landing』あたりに大きく影響を与えているところだと思う。

ドゥーピーズについてはこちらこちらで詳しく考察されています。
キャロライン・ノバクの声が電子的に加工されていることは、当時からヤン富田自身も語っていたことですが、そうかあ、キャロライン・ノバクの正体って実は(以下略)。

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Astro Age Steel Orchestra - Happy Living (Sony/1994) 

「新しい燃料です。」

ヤン富田の4thアルバムは、"アストロ・エイジ・スティール・オーケストラ" という、スティールパンをフィーチュアしたバンド形態でのリリース。
"スティールパン" は、トリニダード・トバゴで生まれた、ドラム缶を加工して作られた独特の透明感のある音色が特徴の楽器で、メロディを奏でることの出来る唯一の打楽器とも言われている。
(スティールパンについて詳しくはこちらを。)

のちのドゥーピーズにつながる "キュート・ミュージック"(ドゥーピーズの登場人物キャロライン・ノバクも登場)に、パンの音色がとても心地良い。
和めます。
ボクはこのアルバムでパンの音にハマりました(そういうひと多いと思うけど)。
ヤン富田の電子音楽的なサウンドメイクの手法も変わらずトリッピーで素晴らしい。何よりポップなのが素晴らしい。

ヤン富田の世界を未体験の方は、先ずこのアルバムか、ドゥーピーズ名義の『Doopee Time』(次回取り上げる予定です)から聴くと良いのではないでしょうか。

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Yann Tomita - An Advebture Of Inevitable Chance (Audio Science Laboratory/2000) 

長い間入手不可能だったヤン富田の2ndアルバム『Heart Beat』(1992) と3rdアルバム『How Time Passes』(1993) をカップリングして2000年に再発された2枚組『素晴らしい偶然を求めて』。

3rdアルバム『How Time Passes』は、ヤン富田が90年代に唯一行なったライヴ "ヤン富田コンサート" (@ Parco Theatrer, Tokyo 1993-04-11・12) の模様を収めたもの。
ラジオチューナーをリアルタイムで操作して受信した音楽や番組とセッションを繰り広げたり、ハンドメイドの電子楽器やオシレーターの音を延々と鳴らし続けてみたり、しまいには「4分33秒」のショート・ヴァージョンを演奏(?)したりと、やりたい放題です。
そして1stアルバムにも収録されていたトリッピーなダブ・アンビエント「C-Ya!」のライヴ・ヴァージョンも素晴らしい。
このひとの場合、普通だと現代音楽とか実験音楽の領域で語られそうな音楽をエンターテインメントに消化(昇華?)しているところが面白い。

で、問題は2ndアルバム『Heart Beat』。
ひとことで言うと、「聴診器等を使って、自らの心音を音楽として楽しもう。」というコンセプトの作品。
よって、CDの形をした円盤がCDケースに入ってはいるものの、そこには何の音も収録されていません(だってホンマにただの円盤やもん)。
ジョン・ケージ「4分33秒」と同じく、 "音楽" という存在そのものを定義し直す野心作、と言えないこともない。

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Yann Tomita - Music For Astro Age (Sony/1992) 

現代音楽とヒップホップとスティールパンとサーフィンと若い女のコをこよなく愛すおっさん、それが我らが愛すべきマエストロ、ヤン富田だ!
このアルバムは、彼の記念すべき1stアルバムにして、それまでの彼の活動の集大成(ちなみに発表当時40才)。
スティールパン、ビッグバンド、現代音楽、電子音楽、カットアップ/コラージュ、ヒップホップ、ダブ…と、音楽の楽しさと幅広さと奥深さをまざまざと見せつけてくれるCD2枚組。
CDのオビには、以下のメッセージが。

遂に完成しました。末長くご愛聴下さい。むずかしい内容ではありません。
1992.7. ヤン富田

だって、ジョン・ケージ「4分33秒」のカヴァーのあとに、そのダブ・ヴァージョン(!)も収録されてるんだぜ。
どんなにロジカルで難しいことをやっていても、ポップでオプティミスティックな楽しい音楽になっています。
1992年の時点でこんな音楽を作り上げたのもすごいが、それも膨大な音楽をバックグラウンドに持つドクターだからこそ。
いま聴いても新しい。と言うか、時代やモードに左右されない普遍的な音楽を彼は創り上げた。
現代の音楽家の中でも、最も重要なひとり。

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【INDEX】 ヤン富田特集 

#13. Miss A - Lowdown (Victor/1989)
#12. Cornelius - Point Of View Point (Matador/2002)
#11. Nigo feat. Flavor Flav - From New York To Tokyo (Ape Sounds/2001)
#10. Boredoms - Super Roots 8 (A.K.A. Bounce/1999)
#09. Pardon Kimura - Locals (Blues Interactions/1999)
#08. Yann Tomita - From Banzai Pipeline To Brain Wave (マガジンハウス/2001)
#07. Dr.Yann & Grandmaster Flash - Vinyl Beat Of Two Turntables With Cybernetics And Bio-Feedback (For Life/1998)
#06. Yin & Yang Tomita - Music For Living Sound (For Life/1998)
#05. Doopees - Dooits! (For Life/1996)
#04. Doopees - Doopee Time (For Life/1995)
#03. Astro Age Steel Orchestra - Happy Living (Sony/1994)
#02. Yann Tomita - An Advebture Of Inevitable Chance (Audio Science Laboratory/2000)
#01. Yann Tomita - Music For Astro Age (Sony/1992)

VA - ele-king presents Wildman's House (Ki/oon/1998) 

『Loud』って音楽誌、っていうかクラブカルチャーを中心としたユースカルチャーを取り上げる雑誌を創刊号から欠かさず10年ちょっと買い続けてたんですが、この度、購読をやめることにしました。
元々ここ数年はほとんど惰性で買い続けてただけだったし、って言うのも、創刊当時は非常にカッティングエッジな雑誌だったんだけど、いつの間にやら業界でそれなりの影響力を持つようになって、気付けばレコード会社の広告をわざわざ金払って読んでるような状態になったからですよ。
イマの『Loud』の中では小林正弘だけが唯一の良心と言うか、ほとんど孤軍奮闘状態じゃないですか?
それに、情報を得るだけならネットで充分。タイムラグもないし。
(ただ、ネットの情報には正確性に欠けるところがあるから、こちらに情報を見分ける能力が必要ですが。)
最近の雑誌だと、『remix』がまた頑張ってるように感じますね。
今出てる号の特集も、エレクトロニカ~クリック/ミニマル/マイクロ・ハウス~グリッチ/パルスまでフォローしていて、勉強になりました。

このCDは、現在『remix』の編集長(なの?)の野田努が編集者だった『ele-king』(現在休刊中)によってまとめられた「ディープ・ハウス」のコンピレーション。
ここでは「ディープ・ハウス」は以下のように定義されています。

ディープ・ハウスというのは曖昧な呼び方だが、その音楽性に意識的であろうとするアンダーグラウンドなハウスを、僕らはとりあえずそう呼ぶ。(野田努)

一応ミックスされてますが、コレ、選曲がいいんすよ。
エルマロの変名ワイルドマンズ・ディスコの早すぎたカットアップ・ハウスから始まり、ベースメントジャックス、4AMのダーク・ファンクなトゥ・ローンズ・ソーズメン・リミックス、フレンチハウスのダークサイドモーターベース田中フミヤのカラフト名義の1stシングルから「Funky Squad」、ムーディーマンのどす黒いジャズ・ハウス、アトモスフェリックな横田進のHARTHOUSEからの作品、ジャジーなロイ・デイヴィス・ジュニア…。
って豪華でしょ?
そしてしっとりとシメてくれるのは、フリースタイルマンことDJサッセの名曲「Love Story」。
この曲は涙が出そうになる位切なくてドリーミーでロマンティックな極上のハウス・トラックですよ。
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