VA - 宇多田ヒカルのうた: 13組の音楽家による13の解釈について 

Artist: VA
Title: 宇多田ヒカルのうた: 13組の音楽家による13の解釈について
Label: Universal Music
Catalog#: TYCT-60055
Format: File
Released: 2014/12/09
今年2014年がデビュー15周年の年である宇多田ヒカルの楽曲のカヴァー集。
このアルバムに参加している13組は、"自らがソングライターとして第一線で活躍しているアーティスト" という宇多田ヒカル側の設定した条件に見合ったアーティストであり、また、選曲についても、宇多田ヒカル側から各アーティストに複数の候補曲を提示したうえでに決められたとのこと。すなわち、宇多田ヒカル側が作品の方向性を主導して制作されている。
ここで僕は、制作側を指す言葉として "宇多田ヒカル側" という呼び方をしたが、この中に宇多田ヒカル本人が含まれているかどうかはどうも定かではないし、多分含まれていないんじゃないかなぁ、という気がする。本人は活動を休止した2011年以降、ラジオ番組や、TwitterやInstagramといったSNSからの発信はあったものの、未だ "人間活動" 中である(まったく関係ないとは思うが、僕はこの "人間活動" という言葉に触れるにつけ、創価学会の "人間力" という言葉を連想していつも微妙な気持ちになってしまう。いや、まったく関係ないけどね)。

さて、僕はやはりこのアルバムを岡村靖幸目当てで聴いたわけです。宇多田ヒカルのデビュー曲である「Automatic」。ファンキーなベースラインが効いている、R&Bマナーに沿ったシンプルなトラックの上を、喘ぎのたうちまわるかのような岡村靖幸のヴォーカルがなんともハレンチ。
最新シングル『彼氏になって優しくなって』(過去記事)を聴いたときに、もしかして、と思ったことがどうやら現実味を帯びてきた。つまり、岡村靖幸の全キャリアを通した最大の全盛期が、間もなく訪れようとしているのでは…。

アルバムとしては、井上陽水、椎名林檎、岡村靖幸、浜崎あゆみという最初の4曲のクォリティがとんでもなく高止まりしているので、中盤以降の中だるみは致し方ないところだけれど、それでもなお前半4曲の余韻でもってアルバムの最後まで一気に聴かせるテンションを維持してくれている。
特に1曲目の井上陽水による「SAKURAドロップス」は、ベテランの余裕を感じさせるラテン・トロピカルな怪作に仕上がっている。この1曲が全部持っていってしまった。本当に恐ろしい男だよ、井上陽水は…。
あとは、浜崎あゆみに依頼した宇多田ヒカル側も攻めてるが、見事に引き受けた浜崎あゆみ側も全然守りに入ってないよなぁ、と。このふたりは、改めて書くまでもないけど、ともに全盛期と言える2000年代につねにチャートのトップをあらそっていた間柄ですよ。

全13曲を通して聴いてみると、当然のように、すべて自分の知ってる曲だった。宇多田ヒカルのアーティストとしての偉大さと、残したつめあとの大きさと深さ、そしてそんな彼女が現在のシーンに不在であることに気づいて、改めて愕然とした次第です。

宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-
(2014/12/09)
V.A.、井上陽水 他

商品詳細を見る
First Love -15th Anniversary Edition- (期間限定生産盤)(DVD付)First Love -15th Anniversary Edition- (期間限定生産盤)(DVD付)
(2014/03/10)
宇多田ヒカル

商品詳細を見る

Tracklist
01. 井上陽水 - SAKURAドロップス
02. 椎名林檎 - Letters
03. 岡村靖幸 - Automatic
04. 浜崎あゆみ - Movin' on without you
05. ハナレグミ - Flavor Of Life
06. AI - FINAL DISTANCE
07. 吉井和哉 - Be My Last
08. LOVE PSYCHEDELICO - 光
09. 加藤ミリヤ - For You
10. 大橋トリオ - Stay Gold
11. tofubeats with BONNIE PINK - time will tell
12. KIRINJI - Keep Tryin'
13. Jimmy Jam & Terry Lewis feat. Peabo Bryson - Sanctuary
スポンサーサイト