小室哲哉 - Digitalian Is Eating Breakfast 

110618.jpgArtist: 小室哲哉
Title: Digitalian Is Eating Breakfast
Label: Epic Sony
Catalog#: ESCB 1013
Format: CD
Released: 1989
[試聴]
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改めて。先日DOMMUNEで生放送された小室哲哉のライヴセットは本当に凄まじいものでした。僕が多くを語っても陳腐になるだけなのですが、つまりはあの2時間が小室哲哉という表現者の、昔も今も変わることのない "核" だったのだと思います。そしてそのことを理解しているかどうかで、彼の作品の評価は大きく変わってしまうでしょう。正直言って、かつてのファンを自認する僕も、彼のことを見誤っていました(音楽家として、ね)。

さて、このアルバムは、1989年12月に発表された小室哲哉初のソロアルバム。TM Networkとしては、前年に傑作コンセプトアルバム『Carol』のリリースがあったものの、この年は外部プロデューサーによるリプロダクション・アルバム『Dress』関連のリリースが主なもので、新作はシングル「Dive Into Your Body」のみだった。とは言え、翌年にはTMNへのリニューアルが控えており、バンドとしては絶頂期であったことには疑いの余地がない。
そんな時期にリリースされたアルバムなので、多くのTMファンが求めていたTMらしさ、つまりシンセバンドとしてのTMのシンセ部分、いわゆる "打ち込み" 部分を前面に押し出したポップスとなっている。言い換えると、TMからバンド成分を除去した音楽ということ。
で、当時まだ歌謡曲業界がインストゥルメンタル楽曲を受け入れる素地がなかったからなのか、それとも本人が歌いたかったかなのかは定かではないが、全編小室本人が歌っています。これがもう残念としか言いようがないヴォーカルで。先行シングルだった「Running To Horizon」の発売当時、僕の通っていた中学校の昼食の時間に校内放送でこの曲が流れたのだが、いかにもTMらしい疾走感のあるイントロのカッコ良さとその直後に入ってきたヴォーカルとの落差に、少なくとも僕のクラスは大爆笑の渦に巻き込まれた。そんな思い出があります。そんな "モスキートヴォイス" と一部で揶揄されるようなヴォーカルではあるが、ファンにとってはそれもまた味(という受け止め方)。
ちなみに「Running To Horizon」はもともとTMのシングル候補曲。このときは前述の「Dive Into Your Body」が選ばれた訳ですが、とは言え、このアルバム自体、TMのデモみたいな作り方をされている。本人曰く、そういった裏コンセプトもこのアルバムには存在したらしいです。
ヴォーカルを除く評価としては、80年代ユーロビートからの影響が色濃いデジタルシンセをバリバリ使用したダンスサウンドが主体。勘違いして欲しくないのは、これ、あくまでクラブミュージックでも、ましてやテクノでもないということ。後に開発されたテクノ耳で聴いても面白味がないのは、基本的にシンセのプリセット音を多様しているからだろう。それは先日のDOMMUNEのライヴにおいても変わっていない模様。ただ、こういうぬるく水っぽいダンスサウンドは、個人的には実は今結構聴ける。あと、基本的にキャッチーでポップなのがいいですね。このあたり、同時進行で『天と地と』のサウンドトラックを制作していた関係で、このアルバムはデジタルシンセを多用したダンサブルなポップスに仕上がっているようです。
結局本作を聴いてもわかる通り、小室哲哉の中には基本的にハウスやテクノは根付いておらず、テクノポップすら実は経由していなくて、プログレとユーロビートがずっと核にある。そんなDOMMUNE試聴時と同じ感想を持ってしまいました。トランスですら彼にとってはその延長線上の音楽であり、そんな認識で聴くと彼の音楽もまた楽しめるのかな、と思います。


Digitalian is eating breakfastDigitalian is eating breakfast
(1989/12/09)
小室哲哉

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小室哲哉

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Tracklisting:
01. Digitalian
02. Shout
03. Opera Night
04. I Want You Back
05. Gravity Of Love
06. Hurray For Working Lovers
07. Never Cry For Me
08. Winter Dance
09. Running To Horizon
10. Christmas Chorus
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コメント

80年代の楽器屋

先日のDOMMUNEライヴを見た正直な感想は「80年代の楽器屋って、ああいうお客さんが多かったよな」です。

当時のシンセはモノフォニック(和音が出ない)でも20万円するほどの高価な機材で、店内では奥の方に配置されていました。そこでは、シンセは買えないけど雑誌やカタログで操作方法を熟知したシンセ・マニアのたまり場でもあり、土日ともなれば、試し弾きを激しく逸脱し、ワンマンショーを繰り広げる人も少なくありませんでした(笑)。

DOMMUNEライヴに映っていた彼の気迫は、良くも悪くも、あの時代のシンセコーナーにあった熱気そのものでした。あの時代の熱気を知らない世代には、凄く新鮮に見えたかもしれませんね。びびんばさんの言う「クラブでのテクノでもない」というのも凄くうなずけます。僕は「楽器屋」に見えたという事なのですが、プログレやメタルに連想を広げる方もきっと多いのでしょう。

下衆な推測になりますが、画面に映っていた大量の機材は、温存していたものなのか、釈放後買い揃えたものなのかも気になりました。もし、前者が含まれるのなら、「ゼロからの再出発」としては若干説得力に欠けるなぁ、とも思います。多くの方が比喩としてコメントしていたJon Lord(Deep Purple)のように、オルガン1台でやってみるとか、僕はそっちを見てみたかったですね。
  • [2011/06/18 11:54]
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  • mizuta
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びびんばさんが小室さんのレビューをする…のが意外(笑)

現役のTM&小室さんファンなので客観的には評価できかねますが、
Digitalian~は80年代バブルの都会の香りがプンプンします。
ペラペラのデジタルサウンド。あの時代にしか出来得なかった
空気感のようなものをパッケージした感じがします。

モスキートヴォイスはハマると抜け出せなくります。
禁断の果実と言えましょう。
  • [2011/06/18 22:18]
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  • koh
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先日のライブ 僕も見ていました。
興奮して
ミュージシャン=小室哲哉
健在を感じて嬉しかったです。

ジャンルはシンセサイザーを使ったりする系統
でも良いような気がします。

インストでドンドン発信して欲しいミュージシャンの一人です♪
  • [2011/06/19 10:55]
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  • 存在する音楽
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>> mizutaさん

僕が楽器屋に行くようになったのは90年代に入ってからなのですが、それでもたまに楽器屋のシンセでショーを繰り広げるひとを見かけましたので、mizutaさんのおっしゃってることは何となく理解出来ます。
時代的に小室フォロワーのシンセマニアを見かけることはほとんどありませんでしたが(何故かYMOマニアがたくさんいたような・・・)。

機材はどうなんでしょう。
ちょっと調べた限りではわかりませんでした。
復帰後にavexの松浦社長が小室のためにスタジオを用意したという話もあるので、avexのカネで買いそろえた機材なのかな、という気もします(放送で見た限り、結構新しめのものが多かったので)。
  • [2011/06/19 15:16]
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  • びびんば
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>> kohさん

意外・・・ですかね。
これでもTMファンのはしくれなのですが。

DOMMUNEの1~2週間ほど前から昔のTMや小室の作品を聴きまくっていたタイミングでDOMMUNE出演だったのですが、このアルバムは特に今聴いても面白いんですよね。
で、今月出た最新作『~2』を聴くと、音の変化が感じられてさらに面白かったです。
  • [2011/06/19 20:44]
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  • びびんば
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>> 存在する音楽さん

DOMMUNEのライヴではプレーヤーとして本人も楽しんでいる様子が分かったのが良かったですね。
最新作『~2』も、本人やゲスト・ヴォーカリストによってほぼ全曲歌われているので、存在する音楽さんの仰るようにインストゥルメンタルのアルバムも聴いてみたいです。
  • [2011/06/19 20:47]
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  • びびんば
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むかし卓球さんが地方でDJするために新幹線に乗ってたら、当時いちばんノリに乗ってた頃のTKとばったり会って、「クラブでDJ?アンダーグラウンドなことやってるね~」って言われたというエピソードがありますが、そのTKが卓球さんよりも先にDOMMUNEに登場するとは夢にも思わなかったです。

trfを立ち上げた前後に、YAMAHAのEOSというシンセのプロデュースを手掛けていたTKですが、その関連で発売されたムック本「TK EOS FACTORY 小室哲哉のシンセ工房」は、彼のテクノ観を知る上でなかなか興味深い内容でした。
ハウス以降のダンスミュージックもあくまでテクノポップの延長として捉えていた感じですね。
TKと同じ髪型だった頃(フラッシュパパメンソール前後)の卓球さんのインタビューも載ってます。

しかし「Digitalian Is Eating Breakfast」ってめっちゃかっこいいタイトルですね。
  • [2011/06/20 10:58]
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  • LEGO CITY
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>> LEGO CITYさん

いや、「デジタリやん」とか言われてましたけれども。

そうか、そういや卓球ってまだDOMMUNEには出たことないんですね。
Derrick MayとかSurgeonなんて、またかーって感じなのに。

それにしてもさすが、小室の話題からでもきっちりと卓球の話題につなげますな。
  • [2011/06/20 23:31]
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  • びびんば
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同感です

はじめまして、ticoと申します。

小室哲哉がテクノポップを経由してないというびびんばさんの解析、全く同感です。

彼の音楽を聴く限り「テクノ的なアプローチ」を感じる事はないのですが、周囲に『小室、TMが好き』と話すと、じゃあこれも好きだよね!って電気GrooveやYMOを勧められるのがちょっと心外です^^;

私はDOMMUNEのライブを見逃してしまったので、びびんばさんが羨ましいです^^
  • [2011/07/12 06:23]
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  • tico
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>> ticoさん

ticoさん、はじめまして。

YMO、TM、電気、それぞれテイストもベクトルも違うので、僕は逆にそれぞれのファンには勧めることはしないです。

ただ、僕は「TM好きならこれも好きでしょ?」って勧めるものがぱっと思いつきません。
それだけオンリーワンというか、孤高の存在ということなのかもしれませんね。

あ、DOMMUNEの動画は多分どこかに転がっていると思います(笑)
  • [2011/07/14 08:45]
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  • びびんば
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mizuta さんのコメント見て思い出したんですけど、現場で小室さんが帰り際にファンに「今日機材何使ってたんですか」みたいな事を聞かれたときに「置いてあるの好きなだけ見ていっていいよ」って言ってたのが印象的だったんですよね。
案外機材オタク的にシンセを愛でる人ではないのかなぁと。
それか復帰後買い揃えた新しいものばかりで思い入れが薄かったのか・・・。
  • [2011/07/16 15:15]
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  • shooter
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>> shooterさん

貴重な現場の情報ですね。

これでちょっと思い当たったんですけど、きっと小室哲哉って機材フェチ属性ないですよね。
そのあたりもテクノとは一線を画している部分を表しているように思います。
  • [2011/07/16 18:01]
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  • びびんば
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