都島 上邑 (大阪・都島) 

一部のフーディーの間で流通している言葉に「寿司を失う」という概念があります。
これは、江戸前の仕事を施したような現代的な鮨の魅力を知ってしまうことによって、これまでの人生で当たり前のように美味しいと思って食べていた昔ながらの一般的な寿司がもはや美味しいと感じられなくなってしまうという不幸な現象を指しているのですが、私も昨年、ああこれが「寿司を失う」ということか、と何度か痛感するという経験をしており、それ以来寿司を食べるということに対してはどうしても慎重にならざるを得なくなっています。

大阪メトロの都島駅から徒歩1分の場所に店を構える「都島 上邑」は、カウンター4席を夜の1回転のみ、というとってもミニマムな鮨屋です。
2021年6月開店というまだ歴史の浅い店ですが、昨年関西圏で絶大な信頼を得るグルメ誌『あまから手帖』に掲載されるなど、確実にファンを増やしているようです。
かくいう私も『あまから手帖』でお店を知って訪問したのが最初であり、今回は美味しいもの好き仲間との新年会に利用しました。



当店のメニューは6,600円と8,800円の2種類のおまかせコースのみ。
もちろん我々は8,800円の方をお願いしました。
なお通常はコース内の一品料理にお肉を使ったお皿もいくつかあるのですが、今回は特別に肉なしで用意してもらっています。

まずはビールで乾杯。
当店のビールは、アサヒスーパードライとサッポロラガービール(赤星)の中瓶。
もちろん我々は赤星の方をお願いします。



前菜は太巻きサイズの鉄火巻。
もとはコースの後半に出していたものですが、満腹で食べられなくなるお客さんが多かったため最初に前菜として出すようになったということです。見た目の通り豪快な一皿であり、海苔の香りが食欲を誘いこれから始まる宴に期待を膨らませるうう。



アサリとあわび茸の椀。ええ出汁。あわび茸のシコシコとした食感がいいですね。



表面を軽く炙ったサワラにカブのソース。このソースだけで酒が飲める。



というわけで、ビールを飲みながら日本酒を追加。当店の日本酒は料理に合わせてのおまかせが基本です。
まずは宮城の山和。



カツオの刺身には濃厚な岩海苔のソース。これは甘いソースの味が主張し過ぎのように感じました。でもこのソースで酒が飲める飲める飲めるゾ。



アワビのご飯。赤酢のシャリにアワビの肝が和えてあって、これは抜群に美味い。もっと食べたかった。



日本酒をおかわり。栃木の大那。



太刀魚の照り焼き。甘辛い表面の香ばしさがいい。



もずくとのれそれ(穴子の稚魚)でさっぱりと口内を整えて…



ここから握りに入ります。
まずはスミイカ。



続いてスズキ。
この2貫は米酢を使ったシャリでの提供でした。

当店のシャリ、アルデンテ並みの硬めに炊かれているにもかかわらずバラけることなく鮨としてまとまっており、しかしひとたび口の中に入れると途端にさらっとバラけるという、とても私好みなシャリである。



日本酒をおかわり。さか松(大阪)。





アジとシマアジの食べ比べですが、ここからシャリは赤酢を使ったものに変わります。タネによってシャリを替えるという二刀流です。



日本酒をおかわり。喜楽長(滋賀)。



握りの合間にもお料理が挟まれてきます。子持ち鮎のコンフィ。チュイルを含めこれはもはやフレンチですね。特に印象に残ったお皿です。マッシュルームのソースもとてもよかった。



握りに戻り、ここから3種のマグロの食べ比べが始まります。
まずは三重のキハダマグロの赤身。熟成は4~5日目とのことで、まだ少し若さを感じる風味。



続いて大間の本マグロ。熟成は15日目ということで、かなり酸味と旨みを芳醇に感じる握りです。



長崎のマグロのカマサキ。熟成は12日目。希少部位でもありますが、素晴らしい香りと味わいで、私はこれがいちばん好きでした。



お酒をおかわり。富久長(広島)。



コハダは〆具合がちょうどいい。



塩麹の茶碗蒸し。ぷっくりとしたやさしい味の茶碗蒸しに麹の塩味がいいアクセントです。



大海老。以前妻と「プリプリ」というオノマトペをエビ以外に使うことがあるかと議論したことがあるのですが、さしずめこのタネは「ブリンブリン」といったところ。



お酒をおかわり。日日(京都)。



ウニとイクラとマスコ。通風予備軍の私はわんわん泣きながら食べました(おいしい)。



赤出し。



煮穴子。ほろほろと崩れそうな柔らかさです。



玉子焼きで〆。
ロール状の台湾カステラであり、握りの〆というよりはフランス料理でいうミニャルディーズ的な一皿です。パォンデロー(ポルトガルの半熟カステラ)に近い優しい甘さがあり、 札幌の弍ノ蔵のようにコーヒーが欲しくなりました。

以上をいただいて今回はひとりアタマ1.2万円弱。
前述の通り握り10貫とお酒を飲ませる料理が12皿出てくるコースが8,800円というのは実にお値打ちで、尊さすら感じます。日本酒も1合千円しない良心的価格。
これからも年に何度か通いたい鮨屋に巡り会えました。



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