ヴイナス戦記 

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『ヴイナス戦記』は『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイン・作画監督としてあまりにも知られる安彦良和が原作・監督を手がけた1989年のアニメ映画作品。
同年封切りのアニメ映画としてはほかに『宇宙皇子』『ファイブスター物語』『機動警察パトレイバー THE MOVIE』『魔女の宅急便』などが挙げられます。まあだいたいそういう時代だったと。
アマプラに入ってたのを見つけ、劇場公開時以来34年ぶりに観ました。

小惑星の衝突により金星に人類が生存できる環境が生まれ、入植が開始された近未来、金星の2つの自治区の間で起こる戦争を舞台に、閉塞感による苛立ちの行き場を探してもがく若者たちを描いた青春群像劇といったまとめ方ができるかと思うけど、当時はバブル経済の真っ只中ということもあり、ここで描かれるような若者たちの閉塞感って、実は当の本人たる当時の若者たちにはピンと来なかったんじゃないかなぁ。僕は中学生だったのでそれ以前の年齢だったし。

ほぼCGを使用していないセルアニメのはずなのに描き込みが緻密でしかもぐいんぐいんとよく動く動く。このあたりはさすがのひと言。キャラクターの艶っぽさは言わずもがなだし、メカニックデザインも独自性があってかっこいい。アリゾナロケを敢行し、実写映像とアニメーションをリンクさせるといった実験的な試みにもチャレンジしている。
よく出来た、評価したい映画ではあるのだけれど…

脚本が散漫というか、詰め込みすぎというか、ストーリーのヤマ場が用意されているのにそこに向かって進行していないというか。
そして何より声優未経験のドシロウト(植草克秀)を主役に抜擢してしまった弊害で、彼がしゃべるとどんな緊迫したシーンも間が抜けたものに成り下がってしまっているのが残念なところ。とても残念。

でも未視聴のひとにはいちど観てほしいなって思うよ。特に今の時代の若者にとってはこの映画で描かれるような閉塞感って共感の対象になり得るだろうから。それは本当は不幸なことだけどね。

ところで元は安彦良和本人による漫画が原作で、三部作の構成で現在二部まで発表された状態で未完となっている(1~2巻が一部、3~4巻が二部)。映画は一部を下敷きに、しかしかなり改変されて作られているのだが、僕は原作の二部の救いのなさがとても好きで、そちらも機会があれば読んでもらいたい。
で、三部はもう描かないの?安彦先生?

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